空手道 市川道場 ニュースレポート

 石黒誠璽 レポート


第2回錬成大会一般の部優勝者である石黒誠璽さんが仕事で(奈良市教育委員会外国語指導助手)書かれたレポートに空手の事についても書かれているので是非ご覧下さい。

「岩さえも穴をあけ、通り道を作る水のようになれ。我を張るな、物事に柔軟になれ。そうすれば、回避する道や通り抜ける道が見つけられるはずだ。」
 日本での勤務初日、自分がこれから教える学校は、市内でも生徒の学習意欲が低く、授業中も落ち着きがないことを聞かされ、「やりがいのある学校に勤務できるぞ!」と嬉しく思ったものでした。もちろん、いろんな困難に立ち向かわなければならないことはわかっていましたが、自分のチャンスにワクワクする思いでした。
 しかし今、瞬く間に過ぎ去った一年を振り返ってみると、「自分のうぬぼれは、徹底的に打ちのめされてしまった。」というのが本音です。日本に来る前、自分が先生になれば、たとえ生徒の横柄な態度や反抗に悩まされても、彼らが授業に参加するように励まし、学習意欲を高めようと努力すれば、必ずそれは良い結果となってかえってくると思っていたので、「僕はどの授業も完ぺきにやれる一番良いATLになれるだろう。」と自分の中の先生像を美化していました。しかし、それは僕の思い上がりで、生徒の心がつかめるようになる前には、自分が持っていた理想の概念を崩さなければならないことがわかりました。そして、すぐに結果を出すことは難しいと感じました。というのも、その時の僕は、生徒の興味や意欲を引き出そうと毎日が戦いだったからです。またそれ以上に、生徒一人一人を知ろうという努力もしました。これは、授業のクラス経営に役立ったばかりでなく、生徒との関係を築く良い機会にもなりました。
 この記事を書いている今も、僕は生徒のために戦っています。彼らが変わっていくスピードや量などはどうでもよいことで、少しづつでも、ゆっくりでも、良い方向に向かっていることが良いことなのだと思っています。
 「あなた自身の中にある凝り固まった物の考え方を捨てなさい。そうすれば、あなたの周りの物はその姿をさらけ出す。」
 カナダでの僕は、自分の思ったことはすぐに口に出し、物事に対して不満に思う時などは、皆に利用されまいとすぐに異議を唱えるような性格でした。日本では、雇用条件の形態上(いろいろな違う学校で、多くの先生方と一緒に仕事をする)、僕のその性格が災いして衝突してしまいそうな機会が毎日のようにあります。二者が長い期間一緒に働いていると、いろいろと意見の食い違いが
出てくるものです。僕は先にも述べたように頑固な性格のため、先生方と一緒に働いているときに、そのような場面に出くわすと、「俺のやり方が気に食わなければ出ていけぇ〜っ!」と叫びたくなることが多々あります…が、それはコーヒーのカフェインの効き目が消えるように、自分の良識がすぐに自分を我に戻してくれるので助かっています。先生同士の信頼関係と柔軟性がお互いに上手くやっていくためには不可欠だということです。以前、僕は心から信頼できる先生方と一緒に働いたことがありました。最初に提案された授業案からは、彼らの将来を見据えた素晴らしい見解を見ることができました。また彼らも、僕が物事に柔軟で、何の隠し事もない性格の人間だ(僕の目標は、生徒の学校生活が上手くいくことだけが望みだったので)とわかると、次第に信頼してくれるようになりました。
 JETプログラムでの経験を一行でまとめるとするならば、「自分の器を超えた大冒険」というような言葉が浮かびます。日本で教えるということ、カナダの代表者として、自分を含め、自分が関わる人たちの世界観を広げ、世界に対する理解を深める手助けをするということ等、どれをとってみても僕自身の人生を変えるような大きな経験となりました。そして僕は、このような経験が出来たことを本当に誇りに思っています。
 「心を空にしなさい、型にはまらず、決まった形のない水のようになるのです。水はカップに入れれば、カップの形になるし、瓶に入れれば、瓶の形に、ティーポットに入れれば、ティーポットの形になる。そのような水になりなさい。」
 友人もほとんどなく、家族もいない国に住んだことで、自分の人生や将来についてじっくり考える機会を持つことが出来ました。自分の人生のほとんどを、柔道とレスリングに費やしてきた僕にとって、日本に来てから空手を始めることは本当に自然なことでした。人間にとって、休まず体を鍛えることは大切なことです。毎日トレーニングを続ければ、日頃のつらい単調な仕事も楽に感じられます。また、人間が毎日マットの上で戦うことに慣れてしまうと、マットの外での戦いは挑戦ではなくなってしまいます。なぜなら、人間は自分にとって価値ある戦い、止めておいた方が良い戦いはどれなのかを見分ける感覚を身につけていくものだからです。このことで僕は、「本当の強さとは何か?」と考えるようになりました。
 僕の空手の先生が、「本当に強い人間は、朝九時から夜の七時まで、毎日勤勉に働いている人」「人が頭を下げるとき、他の誰よりも頭を低く下げる人」また、「弱い人間とは、人を敬う気持ちに欠け、皆の注意を引きたがって、ふんぞりかえって歩いている下品な人」という話をしてくれたことがありました。このように僕は今、忙しい日本の人ごみに紛れ、ここでの生活を楽しんでいます。人ごみの中に僕を見つけだすことは難しいでしょう。なぜなら、僕は、父の国、日本で、容姿は元より日本社会にどっぷりなじみ、次から次と経験することを消化しようと忙しい毎日を送っているからです。
 「友よ、水のようになれ。」ブルース・リー

石黒誠璽 自己紹介

こんにちは、私の名前は石黒誠璽といいます。私はカナダで一番大きな都市のトロントで生まれ、そしてその近郊の都市で育ちました。私は今、奈良市教育委員会所属のALTです。
私の趣味は柔道をしたりバスケットボールそれに色々なところに旅行に行って写真を撮ることです。
私は現在通信教育でイギリスにあるレイセスター大学で応用言語学の修士課程のコースを履修しています。私はカナダのトロント大学で体育学並びに英文学を学び、それから教養学部に入り高校の体育と英語教員の資格を取りました。私は、日本に私のルーツを発見するためとおいしいラーメンを食べるためにやってきました。
私の将来の夢としては、生徒の皆さんがこれから生きていくうえにおいて何か良い影響を与えられるような教師になりたいと願っております。
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